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さまざまなテーマで一年中、開催されている展示会。企業側にとっては自社製品・サービスを知ってもらい、商談につなげる絶好の機会 です。その一方、買い手側にとってもたくさんの商品に直接触れ、情報を収集できる貴重な場になります。しかし、企業側が意識しなければならないのは他の出展者との競合。ブースがひしめき合う会場でいかに来場者を自社の陣地に引き込むか。この点をおざなりにすると多くの出展企業の中に埋没し、高い成果を得ることはできません。
来場者を呼び込むにはさまざまな方法がありますが、最重要項目の一つがパラペット(ブース上部)に掲げるキャッチコピーです。このキャッチコピーは顧客の課題解決を直感的にイメージさせるものでなければ大きな効果を上げられません。
展示会場を回って見ると、「コスト削減」「生産性向上」「効率アップ」「イノベーション」「ソリューション」「働き方改革促進」などの言葉を使っているブースが目につきますが、プロの目から見るとキャッチコピーとしては今一つ。具体性がなく、来場者にとっては1人ひとりの顔が見えてこない「エキストラ」のような情報に留まってしまいます。
キャッチコピーは来場者へのアピール方法であると共に、自社商材を本当に求めている来場者だけをセグメントするツールでもあります。抽象的な言葉を見てブースに足を運んだ人は、商材によって何ができるか・自分にメリットがあるかをイメージできていないことがほとんど。スタッフが10~15分ほど丁寧に説明することでようやく商材の特徴を理解できても、自社に必要のないものであれば契約に至りません。出展側にとってもムダな時間となってしまい、非効率的です。
出展目的が認知向上であれば問題ないかもしれませんが、販路拡大が目的なら1社でも多く契約したいもの。ブースに来てほしい層だけを集客したい場合は、そのぶんキャッチコピーの文言も練る必要があるのです。
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ブースへの集客において重要な役割を果たすのが、アイキャッチの要素です。
アイキャッチとは、看板やグラフィック、映像、展示物など来場者の目を引くものです。これらのアイキャッチは会場にひしめき合っていて、来場者の脳はそれらの情報を高速で処理しています。洪水のように押し寄せくるアイキャッチ群の中で来場者にとってキラリと光るものだけが一瞬で取捨選択されます。そして、来場者は初めてブースの前で足を止めてくれるのです。
アイキャッチ要素には、来場者の興味を掻き立てるために押さえておくべき公式があります。
アイキャッチ×一瞬での強い動機付け=来場者のブースに対する興味
公式のポイントは「一瞬での」です。
アイキャッチ要素の中でも映像や展示物は重要な役割を果たしますが、良さが分かるまで見続けてくれないことがほとんど。グラフィックは一瞬だけ視覚に入っても来場者の脳に残るのはイメージに留まり、何を意味していたかまでは記憶しません。反対に一瞬でインパクトを与えるのが、キャッチコピー。つまり言葉の力です。
昔から「言霊(ことだま)」という言葉が使われてきたように、言葉は人を生かすこともできれば殺すこともできます。テレビなどで有名人が体験談を語る時、「あの人の、あの時の一言で人生が変わった」という話がよく出てきます。言葉の力は想像以上に人の心を揺さぶり、それが人の行動に結び付いていくのです。
優れたキャッチコピーは、来場者を引き寄せ、そのビジネスの将来を変え得る力を持っています。しかもその力は一瞬で相手の心に切り込んでいくことができます。では、優れたキャッチコピーはどうやって作ればいいのか。キーワードは「課題解決型」です。
そもそも商売の基本は、人々の「困った」を解決すること。全てのビジネスモデルがそうとは言い切れませんが、現在大きな市場を獲得している製品・サービスの多くが問題解決型です。
展示会は、自分のビジネスをより良い方向に向かわせるヒント探しの場。来場者は何かしらの課題を解決したいから展示会にやってきているはずです。キャッチコピーに課題解決型の要素を盛り込めば、来場者の潜在的な欲求を呼び起こし、ブースに誘う可能性が格段に高まるのは間違いありません。
「コスト削減」「生産性向上」「効率アップ」「イノベーション」「ソリューション」「働き方改革促進」これらの言葉がなぜ「残念」なのか。一見すると問題解決型に思えますが、いずれも漠然としています。少なくとも来場者に「一瞬」で、課題解決をイメージさせるものではありません。アイキャッチの公式の重要な部分が欠落しているのです。
しかも、これらの言葉は頻発するビジネスワードで、経営者や担当者は会議資料などで日常的に目にします。展示会場でもあちこちのブースに掲げられますが、1つひとつの意味は重要なことでも、言葉は頻発するほど新鮮味が薄れて、インパクトが弱くなるもの。これらの言葉で来場者獲得競争に勝ち抜くには、戦略を練る必要があります。
いかに来場者を自社のブースに呼び込むか。これは最重要課題ですが、来場者に足を向けてもらうには来場者を知る必要があります。そのためには、出展前に客観的なデータから分析することが大切です。
例として、来場者数などのデータを公開している日本最大級の工作機械展示会JIMTOF(日本国際工作機械見本市)の事例を見てみましょう。
2018年11月に開催された第29回の同展示会には、海外を含めて1085社が出展。4日間の開催期間に18万8955人が来場しました。滞在時間を見ると、国内からの来場者の場合、「半日程度」が最多の42.6%、「1〜2時間程度」が14.7%で、合わせて60%近くの人が半日以下の限られた時間で会場を去っていることが分かりました。
ここでの半日とは展示会開催時間の半日程度という意味なので、最長4時間程度だとみていいでしょう。また、その4時間には商談やセミナーへの参加、休憩・食事などの時間を含みますので、自由にブースを回れる時間はもっと短いのです。
来場者の多くは企業の経営者や担当者で、多忙なビジネスマン・ウーマンです。展示会の視察だけでなく、他にも仕事を抱えています。参加者の中にはあらかじめ訪問するブースを決めていて、そこでの商談に時間を割く人も多いです。展示会の出展者は事前に公開されるので、ネットで確認しておいてピンポイントで回った方が効率的です。
参加者が訪問予定になかったブースにふらっと入る時間は、極めてわずかな時間でしょう。よほどの強い「動機付け」がなければ、ブースの前で立ち止まることすらしてくれないのです。
重要なのはどうやって立ち寄る理由を瞬時に判断してもらえるかどうかです。多くの来場者は単なる物見遊山ではなく、仕事の一環として来ています。時間がないだけでなく、頭の中はビジネスモードです。彼ら彼女らの心の中に動機付けを生み出すのがキーワードによる言葉の力です。
優れたキャッチコピーは、瞬時に来場者の目に留まり、次のアクションを促すものでなければなりません。難しいことのように思えるでしょうが、作成にはプロセスがあります。それではここから来場者の心に響くキャッチコピーの作り方を紹介していきましょう。
まず顧客の立場に立つことが出発点です。商売の基本は、相手の困ったを解決することが基本にありますが、この「困った」が掘り下げられていないと出発点がずれることになり、あとの工程でボタンの掛け違いが生じます。
そして、想定する課題はふわっとしていても、一般的過ぎてもいけません。来場者からすれば、焦点のぼやけた課題想定で作られたキャッチコピーは自分のことと実感できないからです。来場者は自分の課題はイメージできても、言葉で抽象化・一般化されると途端にイメージできなくなります。
多くのキャッチコピーがひしめく展示会場にあって、来場者は連想ゲームをするヒマなどありません。負荷になることはスルーしたいのが本音です。来場者に余計な連想ゲームを強いないキャッチコピー。作り上げるには、顧客の課題想定をしっかりしておくことが大切なのです。
マーケティングにおいて、「ペルソナ」がきちんと想定されていることがポイントです。ペルソナの本来の意味は「仮面」ですが、ビジネスでは製品やサービスの仮想のユーザー像のことを言います。
ペルソナは名前や年齢、性別、ライフスタイルなどを想定して具体的な人物にまで落とし込んでいくこともあります。ペルソナ像が具体的になればなるほど課題の輪郭もくっきりと浮かび上がり、これをもとに考えたキャッチコピーは訴求力が高まるのです。
一方、これまで課題解決と表現してきましたが、課題は「問題」と言い換えることもできます。ただし、意味は違います。優れたキャッチコピーづくりの過程では、両者の違いは区別しておく必要があります。
問題はいま実際に起こっている困り事、課題は問題を引き起こす根本原因や本質のことを言います。運送会社の事例は「問題」と言った方が適切かもしれません。
問題の解決方法を提示するほうがいいのか、それとも課題の方か。それは顧客によって異なり、キャッチコピーの作り方も変わってきます。どちらで訴求した方が有効なのかは、やはりペルソナ像を掘り下げてこそ見えてくるものなのです。
ドライバー不足が深刻化しているトラック運送業界では、近年、車両にドライブレコーダーを導入する会社が増加。あおり運転を仕掛けられた場合の証拠を残す目的もありますが、導入せざるを得ない運送業界ならではの事情があります。
それは一般乗用車や歩行者と事故を起こした場合、大きいトラックの方が悪者にされやすいという現実です。
ある地方都市のトラックドライバーは、急に路上に出てきた高齢者をはねて死亡事故を起こしてしまいました。経営者がドライブレコーダーの映像を見ると、高齢者はほんの5メートル手前で飛び出していたことが判明。当然、急ブレーキを掛けても間に合わない距離です。
この運送会社ではドライブレコーダー映像を警察に提供したことで、結果的にドライバーの過失が大幅に縮小されました。「従来ならドライバーの過失の方が大きくされていたに間違いない」と感じた経営者。歩行者との過失割合が5対5であっても、7対3ぐらいでトラックが悪くなることは少なくありません。
もちろん、事故を起こしたこと自体に落ち度がありますが、不公平な形で査定されるとトラックドライバーは自信を喪失、最悪のケースでは事故がトラウマになって退職することにもなりかねません。ただでさえ人手不足な運送会社の経営者は事態を憂いていて、「ドライバーを守る手段はないものか」と考えます。客観的な映像データを残すドライブレコーダーの全車両導入を検討し始めるのです。
ドライブレコーダーのキャッチコピーを考えるとしたら、「守る」がキーワードになるでしょう。運送会社の経営者が抱える独自の悩みを理解してこそ出てくる言葉です。
顧客の課題が具体的に見えてくると「自社の製品やサービスのスペック(性能)がなぜ顧客の課題を解決できるのか」、そして次に「解決した結果、顧客にどんなメリットをもたらすか」をまとめることができます。
ここで大事なのは顧客のメリットであり、これが「目的」になります。自社製品のスペックはあくまで「手段」でしかありません。したがってキャッチコピーもメリット(目的)をメインに打ち出した表現が必要で、補足的にスペック(手段)を加えます。
しかし、現実を見ると展示会場ではスペックがキャッチコピーになっているブースが非常にたくさん目につきます。せっかくキャッチコピーを掲げても、多くの出展企業が高い効果を上げることができていないのです。いわば目的と手段の混同と言えます。
顧客は「自社や自分にメリットがある」と思うから、そのブースに足を運ぶのです。商品のスペックや実績ではなく、メリットを前面に押し出したキャッチコピーの方が注目してもらいやすくなるでしょう。
例えば、ドライブレコーダーを例にとると、「事故の映像を記録」では製品のスペックを説明したに過ぎません。「ドライバーを守る」と言及してはじめて顧客は課題・問題の解決をイメージできるのです。
コピーに盛り込む要素がより複雑になってくると、手段と目的の混同は起こりがちです。これを避けるため、一連の流れで説明できるような「台本」をつくることをオススメしています。ここでは便宜的に台本を3分間メッセージと呼びます。
3分間メッセージは以下の順で進行していきます。
キャッチコピーはここまでのプロセスを踏まないと精度の高いものになりません。ここで出来た一言での表現は「キャッチコピーの種」と表現しておきましょう。この種をじっくりと精査し、最終的なキャッチコピーの芽を引き出すのです。
3分間メッセージの最後に出てきた「一言表現」はそのままでもキャッチコピーに使えると思われるかもしれませんが、それほど簡単ではありません。面倒臭がらずに別の表現に言い換えてみてください。キャッチコピーというものは量が質に直結するからです。
ベストセラーを出している、大手広告代理店の売れっ子コピーライターは、たったひとつのコピーを考えるのに100以上の候補を書き出すそうです。1枚の紙に1つのコピーを印刷し、全てを床に並べ1枚ずつ見比べながら最終的に何を残すかを検討。大変な労力と時間を要する作業です。
大手広告代理店でコピーライターを任されるほどの実力者でさえ多くての手間と時間をかけてようやく作り上げるキャッチコピー。商材・会社の良さを誰よりもわかっているとは言え、素人が心に響くキャッチコピーを考えるためには、自分のセンスだけでは限界があります。
「一言表現」をもとに少なくとも20個の候補を出してみましょう。複数人でアイデアを出し合うのも効果的です。たとえ素人でも、量を追求するうちに必ず光り輝くものが浮かび上がってくるはずです。「表現を少し変えるだけで、これだけインパクトが強くなるのか!」と驚くキャッチコピーも出てくるでしょう。
優れたキャッチコピーの背後に目には見えない多くの努力がありますが、終着点により効果的に辿り着くには他にいくつかのポイントがあります。売り出す商品・サービスの関連情報を洗い出すことで、それは見えてきます。以下にポイントを挙げます。
売り出す製品が1日30分の作業時間を短縮できる工作機械だったとしましょう。この削減時間を年間稼働日数240日で計算すると120時間にもなります。パート作業員の時給が1000円だったとすると年120000円です。自社製品・サービスのスペックを再点検し、そこから得られるメリットを数値化するのは関連情報を洗い出す手法の1つです。
いま機械を導入すれば、この人件費は削減されますが、判断が遅れれば遅れるほどコストは膨らんできます。いますぐ行動するメリットを強調し、すぐ行動しないでメリットを理解してもらうのも有効な手法と言えます。
会場に訪れる経営者や担当者は、常日頃から数字に追われています。会社の業績数値だけでなく、労働時間の短縮ひとつを取っても、働き方改革関連法で具体的な数値が示され、達成できなければ罰則が課される項目もあります。
「この工作機械は大幅な時短が可能」とするよりも、「この工作機械は労働時間を1日2時間短縮する」とした方が、今の企業人には響くのです。時短目標の達成が至上命題になっている総務課長なら、自社の現状は頭に入っているわけで、そこに具体的な数字で切り込まれると「話を聞いてみようか」と心が動くはずです。
出展者が避けなければならないのは、抽象的なコピーです。顧客が商品のことをある程度知っていて、イメージで訴える方が効果は高いと思われる商品なら「水平線の向こうに輝く未来」のように抽象化的表現で印象付けるのも手です。実際にこの種の商品はたくさんあって、マスメディアでは、名の知れた大手企業が抽象的なイメージに訴える広告を出しています。しかし、これは企業自体の社会的認知度が高く、「あの会社の製品なら大丈夫だろう」という前提があるからです。
しかし、中小企業ではそうはいきません。せっかく高い費用を投じて展示会に出展するのですから、少しでも多くの来場者に自社商品のメリットを理解してもらわなければなりません。抽象的な表現だけでは来場者は何のことか分からず、軽くスルーされてしまいます。
キャッチコピーで専門用語を多用するのもやめましょう。マニアックな分野の展示会なら来場者にも事前知識があるので構いませんが、展示会で新しい顧客を獲得したいなら、分かりすい言葉で訴える方が効果的です。
日常の会話でも、相手がベースの情報を分かっているものと決めつけて話を進める人は意外と多いもの。最初から関係者しか分からない言葉をどんどんと繰り出してきて、相手が本当に理解しているかどうかお構いなしに続けると、聞く方はうんざりします。
専門用語多用はこれと似たようなもので、出展者のベクトルが内向きなっている証拠です。キャッチコピーは、顧客の「困った」を解決する企業姿勢を示す手段であることを思い出してください。来場者は何も知らないという前提でキャッチコピーを考えたほうがいいかもしれません。忘れてならないのはホスピタリティの精神です。
キャッチコピーは言い回しひとつで印象が変わってきます。日本語は特に表現が多彩なので、いろんなパターンを試してみるとよいでしょう。以下にはいくつかのパターンを挙げておきます。
キャッチコピーの感想は、顧客に直接聞いても社交辞令が返ってくるだけです。大事なのは自分たちでしっかり考えてチェックすること。「自分たちは出展者。来場者の視点なんか分からない」という人もいるかもしれませんが、ペルソナを高い精度で特定できていれば、それになりきることはできるはずです。
そのための方法として、ロール・プレイングがあります。これはrole(役割)、playing(演じる)の略です。販売員役と来場者役を決めて、アプローチやクロージングなどを練習するのです。
実際の展示会場を想定し、来場者のタイプ別に応対を練習してみるのもいいかもしれません。来場者の中には最初から購入を前向きに考えている人がいる一方で、冷やかし半分で立ち寄る人も少なくありません。販売員役はそのあたりを見極め、適切な対応をしていく必要があります。社員の中には展示会スタッフを何度も経験し、接客に慣れた人もいるはずです。そうした経験者が来場者役を演じるとより実践的なロープレになり、若手社員の勉強になるはずです。
有名な役者が演技中は役柄に埋没して、小さな所作までなり切るということをインタビューなどで答えていますが、素人でもロープレを繰り返すことで顧客の目線がだんだんと分かってきます。是非とも挑戦してみてください。
展示会場を回ってみると、同じような製品を並べているのに、来場者の数に大きな格差が出ているブースをよく見かけます。閑散としているブースの方がいろんな面で劣っているかというと、そうでもありません。むしろ、繁盛ブースよりも展示物やビジュアルなどにお金をかけているケースも珍しくありません。
何故なのかとよく観察すると、明らかにキャッチコピーの差だと確信できるケースが散見されます。言葉の力はそれほど影響力が大きいのです。なのに、キャッチコピーを軽視したブースが実に多いことに驚かされます。問題解決型のキャッチコピーをうまく提示できているブースは全体の10%程度、会場によっては5%ぐらいだそうです。
展示物やグラフィックなどに比べてキャッチコピーに高い費用はかかりません。お金の代わりに必要なのは社員の知恵やアイデアです。その意味では、キャッチコピーの費用対効果はきわめて高いのです。あらゆるキャッチ・アイの中でコストパフォーマンスは最強と言っても過言ではないでしょう。キャッチコピーに力を入れることで他のブースと決定的な差別化を図ることも可能なのです。
キャッチコピーにこだわることで得られる副産物的な効果が「社員の動機付け」です。課題・問題型のキャッチコピーを考えるには顧客のペルソナ想定が前提。社員は作成の過程で今一度、顧客を見つめ直し、自社の商品がどんな課題・問題を手助けできるのか真剣に考え直すことになります。これは顧客中心志向に立ち帰る作業でもあります。
ビジネス社会で一般的に使われる用語でcs(customer satisfaction)という言葉あります。和訳すると「顧客満足」です。中小企業も含めて実に多くの会社がこのcsの追求を企業戦略に掲げ、ビジネスの中で実践しようと努力しています。
しかし、ビジネスで理想とすべきCS追求も、目の前の仕事に忙殺される社員からは忘れられてしまいがちです。
キャッチコピーづくりは顧客中心志向の考えを言葉にするという作業です。顧客はどんな立場の人で、どんなことに悩んでいるか。そこから出発して自社の製品・サービスのスペックを再度見つめ直し、顧客にどんな解決方法を提示していくか。この一連の過程をたった1行の中に込めなければいけません。
社員はこの作業を経験することで、自社の顧客満足度がどれほどのものか、もう一度自分の頭で考え直すことになります。いわば日常業務をブラッシュアップする作業と言ってもいいでしょう。社員の意識アップを促すという意味では、これほど効果的な社員研修はないのではないでしょうか。
展示会は、集客のために来場者のモチベーションを高めることが重要ですが、社員のモチベーションもこれに劣らず大切です。近年ではモチベーションは「やる気」、「意欲」などの意味で持ち入れられることが多いですが、キャッチコピーづくりの過程で社員が仕事の目的を改めて理解して意識が高まれば、日常業務にも良い相乗効果をもたらしてくれるはずです。
展示会は単なる商品の見せ場ではなく、そこで得られた効果を日常業務に還元してこそ真に意味のあるものとなります。アンテナショップ的な役割も担っているのです。
キャッチコピーの重要性について説明してきましたが、もう一度強調しておきたいのは、言葉には魂がこもっているということです。言葉を軽視しないでください。顧客の魂を揺さぶるキャッチコピーができるようお祈りします。